新宮一成&立木康介他、講談社選書メチエ。フロイト=ラカンと銘打っているが、「フロイトを再発見したラカン」「フロイトについて語るラカン」についての書物であり、実質ラカンに関しての入門編書である。
まとまりがない、というのが読了した正直な感想である。編書は多数の筆者が同一の問題を扱うため、視座が統一されていなければ、凄まじくずれた議論が展開されることになる。その編書の弱点が思い切り出てしまった形で、各章、いや、1セクションごとに視座、資料に関するスタンス、論旨の展開の方法など、学術文章に必要な道具がちぐはぐになってしまい、結果として文字の統一感が一切ない。
加えて言えば、あまりに「入門書」ということを意識したせいだろう。横に広く問題を扱いすぎ、個別の問題への踏み込みの浅さが露呈している。ラカンは特に言語学と強いつながりのある精神分析学者なので、学際的な記述にならざるを得ない。そして、学際的な記述は各々の学問領域への深い理解と、丁寧な筆運びがなければ、一気にまとまりと統一感をなくし、どっちもつかずの中途半端なものになる。悲しいことだが、この本ではそれが顕著である。
この二点においてまとまりがない本書であるが、パーツパーツには非常に光るものがある。その光るものを、もっと丁寧に扱っていれば。そう思わざるを得ない、惜しい書物だった。